「ふるさと納税はお得と何度か聞いたことがあるけれど、本当にやったほうがいいの?」
「そもそもどんな仕組みなのかわからない」
そのような疑問を持つ人は多いでしょう。
「ふるさと納税」という名前自体はかなり浸透してきましたが、その内容や具体的な方法についてはまだまだ知られていないのが現状です。
2023年に行われた調査で、20代〜70代の1000人に対し、これまでのふるさと納税制度の利用経験を聞いたところ、半数以上(53.2%)が「利用したことがない」と回答しています。
また利用頻度としても「毎年利用している」はたった24.2%しかいませんでした。さらに「ふるさと納税制度を知らない」という人も約1割いました。
結論からいうと、多くの人にとってふるさと納税は「おすすめできる」納税方法です。
この記事では、ふるさと納税の仕組みやメリット、また始めるときのステップについて詳しく解説します。
目次
ふるさと納税って何?
ふるさと納税とは
ふるさと納税は、都会と地方の税収格差を是正するために、2008年に始まった地方創生を目的とした納税制度です。
通常、納税は自分が住んでいる自治体に対して行いますが、ふるさと納税は、生まれた故郷や応援したい自治体に納税という形で寄付ができる制度です。
ふるさと納税の仕組み
自分が住んでいる自治体に納税を行ったとしても、何も返ってきません。しかしふるさと納税(寄付)を行うと、「寄付金額の最大3割の返礼品」(御礼品)を受け取ることができます。これが「ふるさと納税はお得」といわれる理由です。
また、寄附額のうち2,000円を超える金額は、上限はあるものの、所得税と住民税から控除・還付されるのも大きなポイントです。
ふるさと納税の仕組みを図で見てみましょう。
出典:りそな銀行 ふるさと納税の仕組み
まず、納税者が自分が住んでいる自治体以外に、ふるさと納税という形で寄付を行います。寄付をすると多くの場合、自治体からお礼品(返礼品)を受け取ります。
そして、納税者自身が税金控除の申請手続きを行うことで、税金の控除・還付を受けることができます。
ふるさと納税の4つのメリット
納税者にとってのメリット
ふるさと納税には多くのメリットがあります。代表的なものを5つ紹介しましょう。
2.税金の控除を受けられる
3.好きな自治体を応援できる
4.寄付金の使用目的を指定できる自治体もある
5.寄付を通じてポイントを貰えることも
1.返礼品がもらえる
寄付金額に応じて、寄付先の自治体から「返礼品」をもらうことができるのも、ふるさと納税の大きな魅力の一つです。返礼品は、寄附金額の3割以内に相当するもので、地域の名産品や生活用品などさまざまです。
たとえば、5万円を寄付した場合、最大15,000円相当の返礼品をもらうことができます。ふるさと納税には、2023年9月時点で全国の1,785の自治体が参加しており、寄附する自治体は自由に選ぶことができます。
寄附をすることでもらえる返礼品には、米・肉・魚・野菜・果物・スイーツ・加工品などの食品や、トイレットペーパーや洗剤、タオルなどの日用品、包丁や焼き物などの伝統工芸品と多岐にわたります。
最近は物品だけでなく、「体験」を返礼品とする自治体も増えてきました。グランピング施設・旅館への宿泊券や、温泉、陶芸やカヌーツアーといった体験型アクティビティなど、その地域の魅力を活かした返礼品が多数あります。
寄付を通じて、各地の名産品を味わい、旅行気分を楽しむことができるのはふるさと納税ならではのメリットといえるでしょう。
2. 税金の控除を受けられる
ふるさと納税の最も大きなメリットは、寄付額のうち自己負担分の2,000円を超える金額について、住民税と所得税から控除・還付されることです。自分で選択した自治体に寄付をすることで、本来居住地に納めるべき住民税が控除されます。
ただし、控除額には上限があり、控除上限額以上の寄附をしても控除対象にならないので注意が必要です。控除額の上限は、ふるさと納税を行う本人の年収や家族構成、他の控除制度の利用の有無によって異なります。控除額についての詳細は、下記の「控除額の上限はだいたいいくら?」で解説します。
3.好きな自治体を応援できる
ふるさと納税の本来の趣旨は、税制を通じて、自分を育ててくれた生まれ故郷への恩返しはもちろん、旅先や出張先でお世話になった地域や、これから応援したい地域への支援に役立てるということ。
「ふるさと納税で日本を元気に!」というキャッチコピーの元、都会との税収格差に悩む地方を応援することができます。
ふるさと納税をすることで各地域の特産品や魅力を知るきっかけとなり、寄付した地域に対して親近感をもったり、旅行の候補先になったりするなど、全国の様々な地域とつながることができるのも魅力です。
また近年では、ふるさと納税を通じて災害の復興支援をする、という動きも活発化しています。
令和6年1月に起きた能登半島地震においても、被害を受けた自治体に対し、ふるさと納税を活用した寄付が多く集まっています。災害復興支援の場合、返礼品はなく、その全額が被災地域に寄付されます。
また、被災した自治体の事務負担軽減のため、「代理寄付」という形で別の自治体が代わって納税の寄付を受け付け、被災した自治体へ寄付金を送付する仕組みを取っていることも特徴的です。
4.寄付金の使用目的を指定できる
通常の納税では、納税者は税金が何に使われているのか実感が湧きにくいのですが、ふるさと納税では、97.7%の自治体で寄附をする人が寄附金の使い道を指定することができます。
引用:ふるさと納税ガイド
総務省の「ふるさと納税ポータルサイト」にもあるように、ふるさと納税を通じて、一人ひとりが税金の使われ方を考えるきっかけとなること、税に対する意識を高めていくことも、この制度の目的なのです。
引用:総務省 ふるさと納税ポータルサイト
5.寄付を通じてポイントを貰える
「ふるさとチョイス」や「さとふる」、「楽天ふるさと納税」などふるさと納税の寄付を仲介しているサイトは多数ありますが、返礼品だけでなく「ポイント」がもらえるサイトは、よりお得度が増します。
とくに「楽天ふるさと納税」では、楽天カードユーザーの場合、通常時は1%、キャンペーンやポイントアップ対象となる各条件達成で最大30.5%の「楽天ポイント」をもらうことができます。
また「ふるなび」も、通常時は寄附金額の1%還元、さらに不定期に行われるキャンペーンを活用することで、最大30%の「ふるナビコイン」を獲得することができます。
ポイントはあくまでおまけですが、ふるさと納税は10,000円を超える寄付も多くあるため、うまく活用すればお得に納税することができるでしょう。
不定期にふるさと納税を行う際、このポイント還元率は大きなメリットです。
自治体にとってのメリット
ふるさと納税は、税収に悩む地方自治体にとっても大切な役割を担っています。
本来、税金は1月1日時点で、その自治体に住民票がある人からのみ徴収するのが基本です。しかし、ふるさと納税では、自治体や県の枠を超えて、全国から財政収入を確保することができるのが大きなメリットです。
他のメリットは以下のとおりです。
・収入を早期に確保できる
・地産品や自治体の取り組みをPRすることによって観光を勧誘できる
・被災地の復旧、復興に役立てることができる
控除額の上限はだいたいいくら?
先述の通り、ふるさと納税の控除額には上限があります。その上限を超えてしまった分は「自己負担」となるため注意が必要です。
たとえば、控除限度額が30,000円の人が40,000円分の寄付をした場合、住民税や所得税から控除・還付されるのは30,000円ー2,000円(自己負担分)=2,8000円のみで、残りの12,000円は自己負担となってしまいます。。
では、控除額の上限はいくらなのでしょうか。あくまで目安ですが、「ふるさと納税ポータルサイト」に目安金額が一覧で出ていますので、まずはそちらを参考にしてみましょう。
引用:総務省 ふるさと納税ポータルサイト
ただし、控除限度額は、年収や家族構成だけでなく、医療費控除や住宅ローン控除、生命保険料控除などその他の控除の利用有無によって異なります。
その他の控除とふるさと納税を併用すれば、控除額が大きくなるというメリットがありますが、控除額の上限が変わるので注意しましょう。
寄付をする前に下記シミュレーションなどを使用して、正しい控除額を調べておくことをおすすめします。
参考:ふるさとチョイス 控除上限額シミュレーション
控除額を調べる際に必要なのは、3点です。
① 年収
寄付をする年の年間の収入額です。たとえば、2024年に寄付を行う場合、2024年1月1日〜12月31日までの収入を把握する必要があります。また、夫婦共働きであっても、夫婦の収入を合算することはできず、各個人の収入をもって上限額が決まります。
② 家族構成
配偶者控除、配偶者特別控除の対象となる配偶者がいるか、また扶養控除の対象となる高校生以上の扶養親族がいるか、によって控除上限額が変わります。
③ 利用している控除制度
生命保険控除や医療費控除、住宅ローン控除、寄附金控除など他に利用する控除がないかを調べます。また、IDECO(個人型確定拠出年金)などを利用して、課税所得が小さくなっている場合も、上限額が変わるので注意が必要です。
ふるさと納税の4つの注意点
メリットが多いふるさと納税ですが、控除額の上限があること以外に、複数の注意点があるので確認しておきましょう。
・控除を受けるには手続きが必要
・決済名義が違うと所得税も住民税も控除されない
・税の流出が住民サービスの低下を招く可能性も
一つずつ解説します。
節税にはならない
ふるさと納税=節税と聞いたことがある人も多いかもしれません。ただ、これは誤解であり、ふるさと納税はあくまで税金の前払いに過ぎません。
メリット1で、ふるさと納税をすると翌年の住民税が控除されることをお伝えしましたが、これは、翌年支払うべき住民税を今年先払いしているということになります。
たとえば、40,000円を寄付したとすると、翌年に2,000円(自己負担分)を除いた38,000円の住民税控除を受けられますが、これは支払うべき税金が減ったのではありません。本来は、居住地の自治体に納めるはずの税金の一部である38,000円を、前年に寄付先の自治体に納めているということになります。
ちなみに、所得税は確定申告をした当該年の金額から控除(還付)され、住民税は翌年の住民税から控除されます。このように、控除の種類によってお金が戻るタイミングは異なり、寄付してから実際に控除を受けられるまでは、時差が有ることにも注意しましょう。
控除を受けるには手続きが必要
ふるさと納税で税金の控除を受けるためには、税金控除の申請手続きを行う必要があります。手続きといっても難しいものではないのでご安心ください。
手続き方法には、「確定申告」と「ワンストップ特例制度」の2種類あり、対象者であればワンストップ特例制度を利用するほうが簡易です。ワンストップ特例制度が適用となるのは、以下に当てはまる人です。
・寄付先が5自治体以内に収まる人
・もともと確定申告が必要ではない人(給与所得者で年収が2000万円以下、住宅ローン控除を申請する初年度ではない、医療費控除の申請をしないなど)
ワンストップ特例制度を利用するには、ふるさと納税をした翌年1月10日までに、寄付先の自治体にワンストップ特例制度申請書類を提出する必要があります。最近では電子申請も増えてきたので、より手軽に申請ができるようになりました。
また、ワンストップ特例制度が利用できない場合も、翌年の3月15日までに確定申告をすれば控除されるので問題ありません。
ただし、ワンストップ特例制度を申請していても、確定申告を行うと、ワンストップ特例の適用がすべて無効になるので、注意が必要です。
決済名義が違うと所得税も住民税も控除されない
ふるさと納税では、寄付した人と支払い名義人が同一でなければならず、異なる場合には、所得税や住民税の還付・控除を受けることができません。
よくあるミスとして、自分名義で寄付をする際に、配偶者名義のクレジットカードを使用して決済するというものです。たとえば、妻が自分の楽天アカウントでふるさと納税を行い、支払いに夫名義のクレジットカードを利用した場合には、寄付者と支払い者の名義が異なるため、控除の対象にはならなくなってしまいます。
税の流出が住民サービスの低下を招く可能性も
ゴミの収集や災害避難場所や備品の確保、子育て支援や図書館、公民館の運営などあらゆる住民サービスは、税金によって賄われています。本来、自分が住む自治体に支払うはずの税金を他の自治体に納める人が多くなれば、税収の減少は免れず、行政運営に支障をきたす恐れがあります。
実際、神奈川県川崎市ではこの税の流出が問題となり、令和5年度の減収額は121億円にものぼるとのことです。
出典:川崎市 貴重な市税が、「ふるさと納税」によって流出しています
川崎市のように、地方と比べて人口や年収が多く、税収が高かった都心部は、このふるさと納税により、今後の財源確保が困難となってくる可能性があります。
ふるさと納税を始める6ステップ
ふるさと納税のメリットや注意点を確認できたところで、具体的にどのような順序で始めたら良いのか、ステップに分けて解説します。ふるさと納税を行うために必要なアクションは6つです。
2.寄付するサイトを決める
3.寄付する自治体と返礼品を決める
4.寄付の申し込みをする
5.返礼品と書類を受け取る
6.税金控除の手続きをする
1.寄付金の上限額を調べる
まずは、下記サイトなどを参考に年間の寄付金額の上限を調べましょう。ただし、最終的な年収はその年の源泉徴収をもらうまでは予想でしかないため、詳細シミュレーションを利用したとしても、誤差が生じる可能性はあります。あまり上限額のギリギリを狙わないように注意しましょう。
目安を調べるなら:総務省 ふるさと納税ポータルサイト
詳細にシミュレーションするなら:ふるさとチョイス 控除上限額シミュレーション
2.寄付するサイトを決める
ふるさと納税を仲介する専門サイトは多数あります。それぞれの特色については次の項目で紹介しているのでそちらを参考に、どのサイトを利用するか決めましょう。
サイトによって、参加自治体数の数や選べる返礼品の種類、もらえるポイントなどは異なります。稀に、複数のサイトを使い分けるという人もいますが、寄付履歴を一覧で見ることができず不便なので、可能であれば同じサイトを毎年利用することをおすすめします。
3.寄付する自治体と返礼品を決める
自治体の選び方はさまざまです。自分を育ててくれたふるさとに恩返ししたい、この返礼品がほしいから寄付したい、旅先で気に入った場所があったからその地域を応援したい、被災地の復興支援に役立ててほしいなど、正解はありませんので、自分で納得できる寄付先を選びましょう。
寄附金額に応じて、複数の自治体に寄付するもよし、1つの自治体に集中させるのもよしです。
4.寄付の申し込みをする
いよいよ寄付の申込みをします。難しい手続きは必要なく、通販でお買い物する気分で気軽に申し込みができます。寄付金の使い道を選定できるのもふるさと納税の魅力のひとつなので、寄付をする際は、「こんなことに税金を使ってほしい」という思いを届けてみてはいかがでしょうか。
5.返礼品と書類を受け取る
返礼品が届きました!新鮮なものや冷凍のものは、速やかに宅配受け取りをする必要があるので注意しましょう。ワンストップ特例申請をする場合は、申請に必要な書類が別途送られてきますので、そちらを大切に保管したうえで、申請手続きを行ってください。
6.税金控除の手続きをする
メリット1であげた税金控除を受けるためには、納税者自身で手続きが必要です。
ワンストップ特例申請をする場合は、5でもらった書類に記入の上、寄付した翌年1月10日までに、寄付先の自治体に提出します。
確定申告をする場合は、ふるさと納税仲介事業者が発行する、年間寄付を記録した「寄付金控除に関する証明書」を添付の上、申告しましょう。
どのサイトがおすすめ?それぞれの特徴を簡潔に紹介!
ふるさと納税を行うに当たって、納税者と自治体を仲介するサイトは年々数が増えており、2022年時点で30を超えます。その中でも代表的な4つのサイトについて紹介します。
② ふるさとチョイス
③ ふるなび
④ さとふる
どのサイトも特色がありますが、結論からいうと、最もおすすめしたいのは「楽天ふるさと納税」です。それぞれのサイトの概要を見てみましょう。
【ふるさと納税4大サイト概要】
引用:楽天ふるさと納税/ふるさとチョイス/ふるなび/さとふる
※2024年1月時点での情報です。
楽天ふるさと納税をおすすめする理由としては、以下の3点です。
② ポイント還元率の高さ
③ 楽天市場と同等サービスで通販のように寄付ができる
利用するには楽天会員になる必要があります。
いくらポイントを貰っても、その使い所がなければ意味がありません。その点、楽天はふるさと納税に限らず多方面にサービスを展開しているため、ポイントを利用できる対象が圧倒的に多く便利です。
また、楽天ふるさと納税は楽天市場と同等の使い勝手であり、通販での買い物感覚で寄付ができるのも初心者におすすめしやすいといえます。
また、ふるさとチョイスは、サイト経由で申し込みできるかに関わらず、全自治体の情報を掲載しています。情報量は圧倒的なので、返礼品を比較検討したいという人にはおすすめです。
まとめ
ふるさと納税は、上手に活用すればメリットが多数あるお得な制度です。
注意点を守った上で、地域の名産品を楽しみ、旅行気分を味わいながら、全国の魅力あふれる自治体を応援してみませんか。
難しい手続きはありませんので、興味がある人は誰でも始められます。まずはステップに沿って1つずつ進めてみましょう!