実際に移住を経験した人のリアルな声は、移住を考えている人にとって参考になるものでしょう。
今回は、実際に地元の九州を離れ大阪、滋賀、京都を経て東京へ移住した大久保澪さんに移住を決めたきっかけや移住のメリット、また移住前後のお仕事面の変化などを伺いました。
移住を考えている方は、是非参考にしてください。
大久保澪さん
【ご年齢】
30代前半
【移住前と移住先】
地元九州→大阪府→滋賀県→京都府→東京
【現在のご職業】
ファーストリテイリング→フリーランス 美容系
今回は、東京へ移住をされた大久保澪さんに移住へのきっかけや、これから移住を考えている人に向けたアドバイスなどの話を伺いました。
移住のきっかけと移住への障壁
移住.net編集部:移住をしようと思ったきっかけは何ですか?
大久保さん:私が移住をしようと決めたきっかけは転職でした。
東京への移住直前、当時は大阪に住んでいたのですが、当時の私は今後のキャリアをどこでどのように積んだらいいかに迷走していて、「焦る気持ち」と「夢の片鱗でも掴めたらラッキーだ!」という二つの気持ちを持っていたんです。
その時の私は、特にやりたいことがあったわけではなく、漠然とした未来図はありましたが明確な進路はありませんでした。そんな時に出会ったのが、株式会社クレイジー(当時クレイジーウエディング)の代表をされている山川咲さんです。
それまでの私は、自分が興味のある業種や得意な性質を活かせる場所、という視点で求職活動をしていたのですが、山川さんとの出会いで初めて「こういう考え方で仕事をしたい」「この人みたいになりたい!」という新たな視野がプラスされました。
私にとって人生で初めて抱いた強烈な憧れであり、なりたい大人の女性像が生まれたんです。
それからは後先考えることなく、ただ勢いだけで東京への移住準備をし、1ヶ月後に東京へ移住しました。
移住は、勢いとタイミングが大きく背中を押してくれるものではないかなと感じます。
当時勢いで移住をした自分に対し、今とても感謝していますね。
移住.net編集部:移住をするにあたり障壁になったことは何でしたか?
大久保さん:一番のネックは、職に就くことでした。移住先での生活基盤を安定させるためには、まず職に就く必要があります。
私の場合、当時働いていた会社を半ば強引に退職したため、無知ゆえに諸々の手続きも不十分なまま、とりあえず上京した状態でした。
この時の教訓は、【責任を果たした後に自由を得られる】ということです。
移住の際の各種手続きや生活費の確保、居住環境の下調べ等の最低限のライフラインを轢いていなかったことが、後々私の首を絞めることに大きく繋がりました。
移住のメリット
移住.net編集部:移住してよかった点を教えて下さい。
大久保さん:私は東京に移住したのですが、東京の特性として「人・物・情報が豊か」という点が挙げられます。地元である九州にも関西にもないスピード感と、出会いの数の多さを東京では日々感じますね。
私にとって東京という地は「経験を積んで修行するには日本で一番もってこいの場所」と思っているので、東京でたくさんの経験と出会いをさせてもらえているのが移住して良かったなと思う点です。
移住前後の気持ちや価値観の変化について
移住.net編集部:移住前後の気持ちや価値観の変化を教えてください。
大久保さん:一言で言うと、目の前の可能性がぱっと広がるような気持ちになりました。これまでとは異なる環境に身を置くことで、シンプルに人生に刺激を与えることができましたね。
新しい土地に行くことで心機一転、新しい気持ちになれるので、何かを新しくスタートしたいなというモードに自然となれたのが嬉しかったです。
それまでは必死に奮い立たせて、自分の気持ちを挑戦モードにしていたところがあったのですが、移住によって自然と身体と心のギアチェンジされた感覚でした。
もちろん痛い経験をしたり、家に引き篭もったり、両親を心配させてしまったり、もうダメかもしれないと心折れてしまったり…と、沢山の失敗を積み重ねてきましたが、ある意味で、たくさんの経験を積めたことは移住をしたからこその財産だなと思っています。
今ではどの経験も、大切な私の一部です。
あとは、両親への価値観の変化ですね。両親への感謝と愛情が、これまでの100倍増しになりました。
私の東京進出は大学進学の時とは違い、無装備で自分の人生の夢探しの冒険に出るような状態だったので、両親にはとんでもない心配と心労をかけてしまったと思います。
両親とはそれまではごく普通の親子関係で、とても仲が良いわけでも悪いわけでもなく当たり障りのない会話をしていました。
上京してフリーランスに転向し、自分の人としての器と能力がダイレクトに収入や人脈に繋がることを痛感していくなか、自分と思考の癖や弱みの多くは、確実に家族との関係性が根っこにあるなと感じていたんです。
例えば、私の弱みだったのは嫌われるのが怖くてノーが言えない、人の目がとにかく気になる、自分の本音を言葉にできない、など。
上京後、何をしても仕事がうまくいかない時期が続いたのですが、この弱みや思考の癖はどこからきているのだろうと悶々と考えていました。
私は、子どものころ自分にとって絶対的な存在である両親から言われた言葉、受けた教育から傷付いた経験があります。
親とて人なので色々と葛藤があって当然ですし、私も両親を傷つけてしまったことがありますが、幼い自分にはその時の言葉や経験によってくっきりと心に傷跡ができてしまったのだと思います。
実家を巣立って時間が経ち、大学や職場で色々な価値観が混ざり合うなかで、子どもの頃のトラウマはどこかに埋もれていました。しかし、「何かうまく行かないなあ」というタイミングには必ずこのトラウマが出てきたように思います。
上京後仕事がうまくいかず、極貧時代が3年ほど続いた26歳の時に、「このトラウマは早く向き合った方がいい」と覚悟を決めたのを覚えています。
このタイミングで初めて両親と【対話】をしたんです。
26年間両親に対して思ってきたこと、傷付いたこと、嫌だったことを洗いざらい言葉を選ばずぶちまけたのですが、その時の両親は放心状態で、それからの数年間は何となくお互い気まずい関係性が続きました。その時の両親の顔を思い出す度に、今でも申し訳なさで心が締め付けられます。
この後、私はこの状況をなんとか変えたいと、ある訓練を自分に課しました。
それは極貧生活のなか、往復数万円をかけて2〜3ヶ月に一度実家に帰省し、両親と対話をするという原始的なものです。
これまでもありきたりな会話はしていましたが、本音を話す対話がとても少なかったため、帰省したものの何も話したらいいか分からずモジモジと過ごして東京に戻ったこともあります。それでも手紙をこっそり置いて帰ったり、後からLINEで作文を送ったりと不器用な訓練を諦めずに数年間続けました。
そうして体当たりで不器用な対話を続けた結果、今は「両親を愛している」と心からの言葉がでます。
何か悩みがあったら一番に電話するし、帰省後東京に帰るときはホームシックで泣いてしまうし、世界中で一番幸せであって欲しいし、身体がもし辛い時は代わってあげたい、そのように思うようになりました。
私の一番尊敬する人は、両親です。
何があっても私の絶対的な味方であり、いつも愛してくれている存在がいることに気付けたことで、私の人生にこれまでなかった「絶対大丈夫」という価値観が加わりました。
これまでは、不安定で何となく知識と経験で頭でっかちになっていた仕事観にも、どっしりと崩れることのない安定と安心の土台ができたのです。
それからは本当に不思議なほど、仕事も少しずつうまくいくようになりました。
両親のエピソードはどれだけ書いても書き足りることありません。長くなりましたが、振り返ると私の人生にこれほど大きな価値観の革命が起きたのも、大きく見たら「移住がきっかけだったなあ」としみじみ感じます。
移住にかかった費用と内訳について
移住.net編集部:移住にかかった費用と内訳を教えて下さい。
大久保さん:正確には覚えていませんが、引越しの初期費用で40万円ほどかかったと記憶しています。
また、私の場合はすぐ働ける職を見つけていなかったため、移住後の2ヶ月目から想像を超える極貧生活が強いられました。
最低でも移住して半年間の生活費用を準備するべきだったと教訓になりましたね。
移住前後のお仕事面の変化について
移住.net編集部:移住前後のお仕事面の変化を教えてください。
大久保さん:私は移住のタイミングで会社員からフリーランスになりました。
東京は仕事の数も多く、私の業種である美容系は特に最先端の美容とウェルネスに触れられる機会が増えました。どんどん挑戦するには、東京はいい環境だなと思います。
東京は情報の鮮度が高く量も多いので、これからの自分のキャリアを描けるキャンバスが広がった感覚がありますね。
また、移住前は“仕事は固定の場所で限られた環境という枠の中でやるもの”という考えも強かったのですが、移住後は“仕事は自分で見つけて繋ぐものだ”という軽やかな仕事観に変化しました。
移住前にやっておけば良かったことについて
移住.net編集部:移住前にやっておけば良かったこと、早めに着手した方がいいことを教えてください。
大久保さん:できれば住む場所やその周りの環境を現地に行って、直接肌で感じることはしておけばよかったと思います。
あとは職の確保ですね。キャッシュ面がある程度確保された状態で移住をすると、移住後の心の安心があるので新生活を安心して楽しめるのではないかなと思います。
最後に
移住.net編集部:最後にこれから移住される方に向けた、簡単なメッセージをお願いします。
大久保さん:当時の自分には東京での人脈も馴染みの場所も一切なかったので、移住後の孤独感や寂しさがとてもありました。
今はSNSやオンラインで幅広く人と繋がったり、調査ができる環境があるので、実際に自分が住む場所、生活する環境に属した人や自治体からリアルな情報を得ることはオススメできるかなと思います。
移住.net編集部:本日はありがとうございました。