ふるさと納税は、自分が選んだ自治体に寄付という名目での納税をすると、自治体の自治体の地元名産品などの返礼品がもらえる制度です。
では、株や不動産などの投資で得た譲渡所得は、ふるさと納税の納税額控除の対象なのでしょうか。今回はふるさと納税と投資の譲渡所得の関係について、詳しく解説していきましょう。
目次
譲渡益とは?課税対象?
譲渡益とは、株式や不動産などの投資で発生した利益のことで、別名・キャピタルゲインともいわれています。購入時の価格と売却時の価格の差によって利益が発生する仕組みです。
売却せずに保有したままの状態で発生する利益(不動産の家賃収入)は、インカムゲインと呼ばれており、キャピタルゲインとは異なるものです。
譲渡益で得た所得は、「分離課税」という課税に区分されます。投資の譲渡益以外では、退職金・山林の資源によって得られた取得も、分類課税の一種です。
給与・事業などの所得は総合課税という一般的な税金の計算方法になります。通常の所得に加えて、退職金などそれ以外の高額取得が急にあった場合、それだけ納税額も上がる仕組みです。
この場合、急な所得の増加により税金の支払いに負担がかかってしまいます。その負担を回避する手段として用意されているのが、総合課税とは別の税率である分離課税なのです。
ただし、譲渡益も課税対象であるため、分離課税としてしっかりと納税しないといけません。
ふるさと納税の寄付をすると、譲渡益の税金はどうなる?
譲渡益は分離課税に分類されるため、税金が発生します。譲渡益にかかる税率は以下の通りです。
・所得税率30%
・住民税率9%
長期譲渡所得(保有期間5年以上で売却)
・所得税率15%
・住民税5%
課税対象が増えるということは所得も増えていることになり、所得税と住民税の納税額も増えます。そして、それはふるさと納税の控除上限額も上がる証拠です。
ふるさと納税をしない場合、控除が一切ないために税金を多く納めなくてはいけません。人によっては本業の所得があり、さらに投資などの譲渡益によって臨時収入があったという人もいるでしょう。
そのような人は、例年より多くの収入がありますが、その反面、例年より多くの税金を納める義務も発生するのです。
分離課税は、急な納税額の上昇を回避するためにありますが、所得が増えた分、課税も増加することに変わりありません。
しかし、ふるさと納税の寄付金を支払っていれば、寄付金によって課税が控除されるため、節税が成立します。譲渡益があってふるさと納税を行なった人は、課税額を減らすためにふるさと納税の申告をすることが大事です。
ふるさと納税の申告の種類を知っておこう
企業に所属して源泉徴収・年末調整を受けている人は、所得の申告の経験をしたことがない人もいるでしょう。
そのため、ふるさと納税による税金控除をしたくても、どうやっていいのかわからないという人もいるはずです。そのような人のために、ふるさと納税の申告の方法、種類を以下で説明します。
ワンストップ特例制度
ワンストップ特例制度とは、ふるさと納税の寄付をした自治体に申請書を提出することによって、納税の控除ができる制度です。
寄付をした自治体に、寄附金税額控除に係る申告特例申請書(別名・ワンストップ特例申請書)を提出すれば、申告の手続きをしなくても税金控除できます。住民税から控除できる金額は、寄付をした金額から2,000円を引いた額です。
ワンストップ特例の申請は、以下の条件を満たす必要があります。
・1年間のうちに寄付をした自治体の数が5つ以内であること
・同じ自治体であって申し込みの回数分、申請手続きをすること
・医療費・住宅ローン控除の申請をしていないこと(他の控除を申請している場合、特例の対象外)
・申請期限内のうちに手続きをすること
特例の手続きをすれば、従来の申告をする必要がなくオンランでも申し込み可能なので、手間が省けます。
確定申告
ふるさと納税をして、ワンストップ特例制度の申請条件を満たさなかった場合(申請期限が過ぎた場合など)、従来の申告方法である確定申告をする必要があります。
確定申告でふるさと納税による住民税控除の申し込みをしないと、納税額の減額は実現しないため、ふるさと納税をした場合、しっかりと申告を忘れないようにしましょう。
確定申告におけるふるさと納税の控除申請は、以下のものを用意しなくてはいけません。
・口座通帳・キャッシュカード(還付金の振込先の確認)
・印鑑
・源泉徴収票(企業に所属している人は会社から発行されたものを提出)
・マイナンバーカードに関する書類
申告方法の種類は、インターネット経由での申し込み・税務署に直接出向いて確定申告書に必要事項を記入をして提出という2種類です。インターネット形式の場合、さらにマイナンバーカード方式・ID/パスワード方式の2タイプがあります。
申告の期間は、ふるさと納税をした翌年の2月16日〜3月15日です。提出が遅れると無申告加算税・延滞税の支払い義務が生じるので、注意が必要です。
譲渡益がある場合のふるさと納税申告の注意点
投資による譲渡益がある人がふるさと納税の申告をする場合、その際の注意点を把握しておくことが重要です。その注意点とは何か、以下で説明します。
国民健康保険料が上がるケースもある
企業に所属している人は社会保険に加入しますが、そうでない個人事業主・フリーランスの人は国民健康保険に加入しなければいけません。
国民健康保険に加入している人に譲渡益があった場合、保険料が上がる可能性もあります。国民健康保険には複数の種類があり、その違いは次のとおりです。
・均等割:加入人数で保険料が決定
所得割における保険料は、所得の10%です。譲渡益によって所得合計額がアップするとそれだけ国民健康保険の金額も上がります。ふるさと納税をしても譲渡益の影響で保険料が増えてしまい、それだけ負担がかかってしまうこともあるのです。
ただし、源泉徴収がある特定口座を所有している人は、所得の合計の扱いにされないため、譲渡益があっても国民健康保険料に反映されません。フリーランス・個人事業主の人は、確定申告前に保険料のことも頭に入れておきましょう。
投資の損失がある場合は控除限度額に影響しない
投資をして損失が発生した場合、所得が増えないため、控除限度額が上がることはありません。ふるさと納税の控除額はあくまで譲渡益が発生した場合です。
また、株式などの損失は、ほかの所得と合算して損失分を相殺する「損益通算」ができません。それにより所得が下がることもないため、控除限度額が下がる心配は不要です。
分離課税の対象である投資をやっているからといって、損失が出ても控除限度額が上がるわけではないため、注意しましょう。
まとめ
各地の名産品が入手できてさらに節税対策にもなるため、多くの人が利用しているのがふるさと納税です。納税という形で各自治体に寄付をすると各地の特産品・名物品が返礼品としてもらえるため、各地の自治体の返礼品を調べている人も少なくないでしょう。
ふるさと納税の寄付をしていて、投資を行なっている人は、投資で得た利益はふるさと納税による納税額控除の対象にはならないと思っている人もいるかもしれません。
投資によって発生した譲渡益は、ふるさと納税による控除の対象です。ふるさと納税の寄付と投資の譲渡益は、決して無関係でないことをしっかりと覚えておきましょう。
また、譲渡益は、投資先の保有期間によって税率も変化するため、短期・長期の譲渡所得の違いを覚えておくことも大事です。
譲渡益納税の仕組みを理解して、円滑にふるさと納税の控除を行いましょう。