コロナ渦で働き方が見直され、さまざまな働き方ができるようになった昨今、地方移住を検討する方も多く見かけるようになりました。
地方での生活への憧れから、移住を検討される方も多いのではないでしょうか。
私の場合は、憧れではなく生活スタイルの変化に伴った理由での移住だったこともあり、少し後ろ向きな気持ちで移住生活をスタートさせました。
この記事では、私が実際に長野県にUターン移住した経験をもとに、気付いたことをご紹介します。
移住のきっかけ
都会での暮らしをとても気に入っていた私が移住したきっかけは、元夫との離婚でした。
当時、東京のIT企業に勤務する傍ら1才の息子を育てていた私。
シングルマザーになるにあたり、「子どもに寂しい思いをさせない環境で暮らすこと」「働き続ける環境を確保するために保育園の入園ができること」の2点を重視し、どのように暮らしていくかを検討し、故郷の長野県佐久市にUターン移住を決意しました。
暮らしてみて初めて気付いたこともたくさんあったので、今後の暮らしの参考にしていただければと思います。
長野に移住して気付いたこと5選
ここでは、長野に移住して気付いたことを5つご紹介します。
1.物価は意外と安くない
「田舎は物価が安いから…」と耳にすることがあると思います。
しかし実際に暮らしてみて感じるのは、「物価はほとんど変わらない」ということです。
正直なところ、千葉県に住んでいた頃と長野県に移り住んでからの生活費を比較すると、長野県に来てからの方が生活費は減っています。
減った理由は、「車移動なので仕事帰りにお酒を飲んで帰ることがない」「制服のある会社なので通勤用の服が必要なくなった」「車移動なので大型のものを購入した時の配送費がかからない」など物価とはあまり関係ない理由によるものです。
今は物流も発展し、チェーン店も増えましたので、生活用品の購入単価は千葉県にいた頃とほぼ変わりません。
また、資源エネルギー庁の『給油所小売価格調査』によると、長野県はガソリン代の高い都道府県第1位なのです。
海から遠く、輸送コストがかかる海産物やガソリンなどは、比較すると高くなってしまうものも…。
しかし、お野菜の新鮮さや瑞々しさ、おいしさという点ではやはり別格なので、購入単価に現れない面での価値の高さと相対的な安さを感じることは多々あります。
お野菜に関して言えば、夏は特に多くの家庭でトマト、ナス、きゅうり、ピーマン、大葉などの夏野菜をお庭で育てている家庭も多いので、家庭菜園をする方は出費を抑えて過ごせるかもしれません。
また、大きく変わるのは住居費です。
長野県内でもマンションの価格が高騰してきていますが、それでも新幹線の駅付近のマンションは東京の半額程度で買えますし、一軒家の賃貸や中古物件も充実しているので、この点は大きなメリットだと思います。
2.仕事探しは事前調査が重要
私は移住を機に転職をしたのですが、転職活動をして驚いたのが、働く業界に大きく偏りがあるということです。
長野県は、製造業と観光業が非常に盛んなため、例えばエンジニアの採用は、いわゆる「組み込み系エンジニア」と言われる家電や機械を動かすための設計をするエンジニアの募集が目立ちます。
また、海外での部品買い付けや海外営業、海外からのお客様に対応できるような英語のスキルが高い人が非常に重宝されるようです。
私は前職でシステムエンジニアをしており、正直「エンジニアならどこの地域でもやっていけるだろう」とたかをくくっていたのですが、私が前職で担当していたのは総務部や経理部の方が使うような社内のシステムを作る仕事だったため応募できる企業がなく、再就職先は全く経験のない機械メーカーへの就職になりました。(それはそれで楽しく仕事ができています。)
もし「前職のスキルを活かしたい」「企業就職をしたい」ということであれば、移住先の一つの判断材料にしてみるのも良いかもしれません。
一方で、WEBライターやデザイナーなどフリーランスで土地に縛られない働き方をしている方や、テレワークを継続して首都圏の企業での勤務を継続している方、地域に密着したプロデュース業や農業など、地方だからできる新たな働き方を見つけている方も多くいらっしゃいます。
移住を推進している地域では、そういったコミュニティや移住者限定のシェアハウスなども充実していたりします。また、移住者向けの就職先斡旋や補助金制度などをしている自治体もありますので、ぜひ調べてみてください。
3.子育てがしやすい
千葉県に住んでいた頃、一度だけ待機児童を経験したこともあり、移住を決意するきっかけになった1番の理由も「保育園の入りやすさ」でした。
預ける場所がない=働けない=生きていけない、と、仕事はシングルマザーにとっては生活に直結する大問題のため、保育園の入りやすさは最重要項目の一つです。
佐久市は非常に子育て支援が充実しており、妊娠中から保育園の入園希望についてアンケートをとり、入園を希望する子どもの数に応じてその年に必要な保育士の確保を進めるなど、保育園入園の支援にも力を入れています。
そのため、特殊な事情や転勤による一時的な待機など一部の理由を除き、待機児童はほぼおらず、職員の確保ができているため途中入園するお子さんもたくさんいました。
実際に、私も申し込みをした翌月には子どもを入園させることができ、仕事を予定より早く進めることができたのでとてもありがたかったです。
また引っ越しの際、保育園の事情などを市役所に相談しに行ったのですが、入園しやすい地域や園の状況などを細かく教えていただくことができ、居住地や職場を決める際の参考にもなりました。
コンパクトな街だからこそ、市が全ての園の状況を把握しており、融通がきく面があるのだと思います。
また意外だと言われるのが、進学のしやすさです。
千葉県に住んでいた頃は「中学受験」という言葉を頻繁に耳にしていましたが、長野県では中学受験は一部の希望者のみという印象がとても強く、首都圏のように高校入学や大学入学を見据えて中学受験をするお子さんはほとんどいません。
また地方の場合、高校は偏差値ごとに各1〜2校ずつ程度しか選択肢がないため、学校での成績がそれなりに良ければ通常の試験勉強程度で進学校といわれる公立高校に合格できますし、そのまま勉強に意欲のある仲間と大学進学に向けて良い環境で日々を過ごすことができるため、中学受験の必要性を感じたことはありません。
私立に通わない場合は学費も安く済みますので、その分習い事をさせてあげたり、旅行でいろいろなものを見せてあげる機会を増やせたらとも思っています。
親子ともに「進学する環境を容易に整えられる」というのはとても良い面だと思いますし、シングルマザーとしての生活を考えた時に、進学のしやすさと教育費の安さというのも一つ移住をする大きなポイントになりました。
4.人とのつながりが生活の質に直結する
私が住んでいる長野県の東信地区は、内陸で山に囲まれている環境のためか、よく言えばコミュニティをとても大事にする、悪く言えば少し閉鎖的な”内輪ノリ”のような空気のある地域だと感じます。
ただ、首都圏と比較すると家事代行サービスや託児サービスなども少ないため、そういった人間関係に助けられることが非常に多かったです。
現在、私は実家で両親と同居しているため、保育園の送り迎えや病児保育などは両親に助けてもらっています。他のお子さんの送り迎えの様子を見ていても、祖父母がお迎えにいっている家庭も多く、家事などを助けてもらっているようです。
他にも、田植えの機械を共同で使用していたり、夏休み中に採ったカブトムシやお庭で取れた野菜を同僚にわけてもらったり、どうしても手が回らないときに一緒に子どもを預かったりと、助け合いの場面を頻繁に目にします。
千葉県に住んでいた頃は、友人や同僚とは住んでいる場所が離れており、助け合うことが難しいと感じることも多くありました。しかし田舎の場合は、同僚や友人とも居住地が近いケースも多いので、私のような新参者はいろいろと地域のことを教えてもらうことも多く、助かっています。
特に地方の場合は、インターネットで調べても情報が掲載されていないことも多いので、その土地に長く住んでいる方や情報通な人の情報で穴場のイベントや遊び場情報などをいただくことも多かったです。
5.車移動の思いがけないデメリット
千葉県で暮らしていた頃は、暑い日差しの中で荷物を持ち運ぶのが本当に大変で、「車が欲しい」とよく思っていた私。
しかし、実際に車を手に入れたことで、公共交通機関のありがたさを感じる場面もありました。
1つ目は、通勤です。
「通勤ラッシュから逃れられたら、どんなに快適だろう」と思っていたのですが、いざ車通勤になると、今まで自分の時間として使えていた移動時間が運転時間に変わり、自分の時間が大幅に減ってしまいました。
通勤時間は、買い物もSNSチェックも読書もできる子育てワーママの貴重な自由時間だったのですが、運転中は何もできません。
最近では、音楽をかけたりオーディブルで音声で本を聴いたりしていますが、やはり自由度が大きく減りました。
2つ目は、送り迎えの多さです。
小学生以上のお子さんを育てている同僚たちの週末の時間は、大抵部活や習い事の送り迎えに消えているのだそう。
もちろん小学校のグラウンドなども開放されており、子どもだけでも通えるものもありますが、塾のように帰りが遅くなるものや遠方での試合などは、公共交通機関の発達していない地方では送り迎えが必須になります。
3つ目は、維持費の高さです。
物価のところでもお話しした通り、長野県はガソリン代がとても高いです。私は軽自動車のワゴンタイプに乗っているのですが、ガソリン代が月に1万円、それに加えて車検代(2年に1度7万円)と次の車の購入費を工面するために毎月2万円のつみたて貯金をしています。
荷物を運ばなくていい、混雑もない、エアコンの効いた車内でドアtoドアで移動できる、旅行の時などは人数が増えると移動費が安いなどのメリットはありますが、やはり維持費は結構な痛手でした。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
地方の暮らしは都会に比べると不便を感じることも多いですが、モノや情報が少ないぶん人の温かさに支えられる部分が非常に多く、離婚直後で傷心だった私も、今のところ心の栄養が補充された生活を送ることができています。
また、子どもたちもたくさんの自然や人と触れ合いのびのびと暮らせているため、結果的には移住を決断して良かったです。
佐久市は東京からも新幹線で1時間程度、軽井沢とも非常に近いので買い物などにもあまり困らないので、その点も地方移住としては選択しやすい地域なのではないかと思いました。
長野県に移住を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。