長野県は自然豊かで食が美味しく、かつ都心へのアクセスも良いことから、移住先として国内最高クラスの人気を誇ります。
2022年にNPO法人「ふるさと回帰支援センター」が行った調査でも、移住希望地の第2位に長野県がランクインしていました。
しかし、旅行で行くならともかく、移住となると出費は計り知れません。数いる移住者の中には、人気につられて勢いで引っ越した後、しばらく家計の維持に苦労したという人もいることでしょう。
このような事態を防ぐには、あらかじめ移住費用の見積もりを行ったうえ、その後の生活費も考慮しつつ十分な予算を貯めておくことが重要です。
そこで本記事では長野への移住、およびその後の生活にかかるコストを一通り紹介していきます。
長野への移住費用の見積もりに必要なコスト
移住に必要なコストとしては、まず「住宅費用」と「引っ越し料金」が挙げられます。また、田舎には交通網が敷かれていない地域も多いため、自動車を持っていない場合は購入が必要です。
住宅費用
長野県における住宅費用の相場は、1坪あたり60〜90万円程度です。全国平均が90万円前後(住宅金融支援機構調べ)であることを考えれば、長野県は比較的、新築物件を建てやすい地域といえます。
ただし長野市や松本市などの都心部、および軽井沢町をはじめとした人気の別荘地に関しては、1坪あたりの地価が20万円を超えることも珍しくありません。
土地価格を少しでも抑えたい場合は、職場へのアクセスに支障のない範囲で、都心部や行楽地から離れたエリアを検討するといいでしょう。
引っ越し料金
引っ越し料金は、主に移動距離や世帯人数、依頼時期などによって決まります。例えば東京から長野に移住するとして、移動距離が200㎞程度である場合、引っ越し料金は家族一人当たり5〜6万円が相場です。
なお年度替わり(3~4月)などの繁忙期、および燃料価格が高騰しているタイミングに依頼すると、引っ越し料金が相場に比べて万単位で高くなります。転勤などの急を要する事情がない限りは、繁忙期を避けたうえで引っ越しの予定を入れるといいでしょう。
自動車代(未所持の場合)
土地価格の安さを重視して山間部に移住する場合、絶対に避けて通れないのが移動手段の問題です。
鉄道やバスが1時間に1〜2本だったり、そもそも駅やバス停までが遠かったりするため、公共交通頼りでは日常生活にかなりの苦労を強いられます。
なので自動車を持っていない方は、移住前に必ず購入しておきましょう。
車種に関しては、ミニバンやワンボックスのような積載量の多いタイプがおすすめです。一括払いで購入する場合の相場は200〜400万円ほどですが、自動車ローンを組めば月々2〜3万円の返済で済むため、移住費用への影響はそれほど大きくなりません。
長野移住後の生活費も見積もるなら覚えておきたいコスト
長野移住後にかかる生活費のうち、特に都会との差が大きいコストは「物価」「家賃」「水道光熱費」「通信費」の4種類です。
都会より安いもの
長野は物価が全体的に都会より安いうえ、賃貸物件に関しても広い部屋を安く借りやすい地域です。
物価全般
2013年以降、長野県の物価水準は全国40位前後で推移しています(総務省統計局調べ)。
これは物価の安さでほぼ常時、全国TOP10に入っているという意味です。中でも安いのは食材費。農業生産が盛んな一方で消費者人口は少ないため、よほどの不作や経費高騰がない限り、大きな値上げは起こりません。
ただし、ガソリンをはじめとした輸入品に関しては、輸送費の関係で値上がりしやすいので注意してください。
賃貸物件の家賃
長野における賃貸物件の家賃相場は、長野市をはじめとした都心部でも6万円前後に留まります。しかも長野の賃貸物件は、単身者向けのワンルームではなく、3Kや2LDKといった「家族で住める部屋」がほとんどです。
参考までに、東京23区で賃貸物件を借りようとすると、同じ広さで10〜20万円ほどの家賃がかかります。自営業者やテレワーク主体の人であれば、長野に拠点を置いた方が間違いなく生活費を抑えられることでしょう。
都会より高いもの
長野は都会に比べると、水道光熱費や通信費といったインフラに関するコストが高くなる傾向にあります。
水道光熱費
各県が実施した2022年の家計調査によると、東京都の水道光熱費が平均22,500円ほどなのに対し、長野県の水道光熱費は平均25,000円弱となっています。とりわけ冬場は暖房費がかさみやすく、灯油ストーブなどを使う場合はその燃料費も考慮しなければいけません。
水道光熱費を移住前と同じ水準に保つには、照明をこまめに消すなど様々な節約が必要となるでしょう。ただし、長野には除雪機や克雪住宅に関する様々な補助金が存在するため、雪対策に関しては心配無用です。
スマホ等の通信費
長野に限ったことではありませんが、地方はスマホなどの通信費が都心より高くなりがちです。携帯電話料金を例に挙げると、長野県は東京都に比べて年間6,000円ほど費用が高い、というデータが先述の家計調査から出ています。
また山間部の場合、そもそも電波が届きにくいということも忘れてはいけません。有線LAN配線(50,000円前後)や衛星アンテナ(40,000円前後)といった通信設備用の予算も、念のために予め用意しておくといいでしょう。
長野への移住費用を安く抑えるコツ
長野への移住費用を安く抑えるには、補助金や空き家バンクといった公的サービスをどこまで活用できるかが重要です。
補助金を活用する
長野県の移住者向け補助金の一例(2023年3月時点)
制度名 | 助成額 |
信州健康ゼロエネ住宅助成金(県共通) | 基本額:50万円 県産木材使用:10~20万円 伝統技能活用:10万円 その他諸々(上限は合計150万円) |
飯田市脱炭素先行地域づくり事業補助金 | ゼロエネ住宅:55~100万円 電気自動車:蓄電容量×2万円(上限あり) その他:設備費の3分の2(上限あり) |
大桑村住宅新築補助金 | 50~100万円 |
長野には移住者向けの制度が多く用意されており、中でもゼロエネ住宅など、エコ関連の補助金が充実しています。
このような制度は期間限定で設けられることも多いので、詳しいことは移住予定の市町村のホームページで直接確認してみてください。
空き家バンクを利用する
空き家バンクとは、空き家の所有者と利用希望者を仲介するサービスで、各自治体がそれぞれ運営しています。
全国の空き家情報はホームズのようなお馴染みの賃貸情報サイトでも確認できますが、長野に限定するなら「楽園信州空き家バンク」を利用するのがおすすめです。
楽園信州空き家バンクは、各市町村および地元の宅建業者が連携する形で運営されているため、時には一般の情報サイトに掲載されないような穴場物件にも出会えます。
また、ポータルサイト内で空き家を検索するだけで、その家に適用される補助金の有無がひと目でわかる点も非常に便利です。
もちろん価格もかなりお手頃で、例えば2023年3月現在、安曇野市では築18年・4LDKの一軒家が980万円で売られています。住宅価格を抑えるうえで、空き家バンクの最新情報は真っ先にチェックするべきといえるでしょう。
古い家具家電は処分し、現地で買い替える
引っ越し料金を安く抑えるためのコツはただ1つ、「荷物を減らす」ことです。買い替え時期が近そうな家具家電を前もって処分すれば、引っ越し作業に要するトラックの台数・サイズが減り、結果として依頼費用の節約につながります。
「処分にも金がかかるのでは?」という心配はいりません。根本的な機能性さえ保たれていれば、リサイクルショップの出張買取等を利用することで、逆に移住資金を増やすことが可能です。
長野への移住費用を見積もる方法まとめ
以上、長野への移住費用や移住後の生活費、および安く移住するためのポイントを紹介しました。
本記事を通じて長野での暮らしに興味を持たれた方は、ぜひ県のホームページや空き家情報サイトなどで、安く移住するための情報を定期的に確認してみてください。