今回は、現役の市長よりお話をお伺いしました!
四国にある愛媛県•宇和島市の岡原 文彰市長に、宇和島市の魅力と移住施策について、移住.net早川社長が直接お話を聞きました。
政治の世界に入ったキッカケや、政策として進める3つの柱や6つの創についても、わかりやすくご説明頂いています。
ぜひご覧ください。
宇和島市ホームページ | 四国・愛媛 伊達十万石の城下町
岡原文彰(おかはら ふみあき)
愛媛県宇和島市長
S45年生まれ。
宇和津小学校、城東中学校、宇和島東高等学校、松山大学法学部に進学、卒業。
その後、水産会社に従事し、H25〜H29年宇和島市議会議員。
H29〜宇和島市長。
【血液型】A型 【家族】妻・長女 【身長】190㎝ 【体重】100kg
【好きなスポーツ】サッカー・ラグビー
早川諒(はやかわりょう)
「移住.net」運営会社、株式会社SoWiLL代表取締役。22歳で東証プライム上場企業に入社し、27歳で同社子会社社長に就任。
30歳で自己資本でセブ島で起業して、「0円留学」という留学スタイルの英語学校を設立し運営。4000名以上の卒業生を輩出する。
2020年より沖縄に移住して、現在沖縄に住居を持ちながら海外・国内の各地で事業展開中。
2023年、兼ねてより運営してきた移住.netの仕組みをプラットフォーム化して事業化。当移住メディアの運営もプロデュースする。
2023年4月、著書「最強のひと言」を出版。
目次
民間企業の営業職から、なぜ政治の世界に?
早川:まず僕ら一般市民からすると、市長がどのようなお仕事をされているのか、なかなか身近に感じにくいのですが、市長として普段どういった活動に取り組まれているのか、お聞かせください。
岡原市長:はい、大きく分けて2つのことをしています。ひとつは市民の皆様や市議会、あるいは職員からの提案を受けて、宇和島市にとって何が必要な施策であるのかを判断することで、もうひとつは宇和島市やこの地域にある商品の魅力について、国内外に向けてしっかりとアピールしていくことです。
たとえば宇和島フェアを開催したりとか、霞ヶ関に出向いて予算等の配慮をしてほしいとアピールしたり、とにかく、この四国の西南地域において何かを待って期待するというよりは自分たちが掴んでいくと、そういった姿勢で日々、行動しております。
早川:市長は水産会社の営業職を経て政治家になられたとお聞きしていますが、どういった経緯で政治の道を志そうと思われたのでしょうか?
岡原市長:この地域は第一次産業が基幹産業です。具体的には柑橘や真珠、魚類養殖が日本有数の産地でもあり、その中で私は以前魚類養殖の世界に身を置き、エサを供給したり、でき上がった魚を国内外へと販売する仕事をしておりました。
その販売では魚の出来具合や価格など、さまざまな要素が絡むことにより産地間競争が生まれます。営業をしていていつも思ったのは、他の産地との差別化するためにも「宇和島市をあげて、この地域のものをしっかりと後押ししてもらえたならば!」ということでした。
それを実践するためにも、私はまず市議会議員選挙に挑戦しました。当選後はこの地域のものをしっかりと売っていくために、どうすればいいか、多くの地域に視察に出かけるなど、さまざまな取り組みを行ってきました。
このように私の原点は、民間企業での経験から、市議会議員時代に培われた思いであり、それらを現在行政として実践しています。
早川:僕も民間企業を経営している立場ですので、そういった民間での営業を経験された上で政治家になられて、なおかつ市をあげて地元のものを販売することに力を入れていただけるのは、非常に心強いなと思います。
岡原市長:ありがとうございます。
『選ばれるまちへ』向けた6つの創とは?
早川:市長は現在、政策として3つの柱を掲げていますよね。そのひとつに『選ばれるまちへ』があり、これを実現するために6つの創として具体的な政策を掲げています。
この『選ばれるまちへ』の実現に向けた具体的な取り組みについてお聞かせください。
岡原市長:6つの創とは「産業・安全・安心・人・まち・チーム宇和島」をつくるということです。1つ目の「産業をつくる」は、先ほど申し上げたとおり、宇和島の基幹産業は第一次産業ですので、この地域のものをいかに価値を高めていくことができるのか、行政としていかに後押しできるか考え活動しています。
2つ目の「安全をつくる」は、災害に見舞われたときのために備えることはもちろん、発災後を見据え、事前に復興の道筋とどのような計画をしておくかであります。
今から5年以上前、私たちは平成30年7月豪雨災害を経験いたしました。そのときの経験を活かしながら対策を立てています。
3つ目の「安心をつくる」は、この地域の高齢化率が40パーセントを超えていますので、市民の皆様が安心して住み慣れたまちで暮らしていくことができるように、障がいのある方々のサポートも含めて、さまざまな施策を展開しています。
4つ目の「人をつくる」では、世代を問わずリカレント教育ができる環境を目指し、大学や歴史、文化などの講座を開く試みを行なっています。
また、子どもたちのこれからに対して、もっと大人が関わりながらやっていくべきとの思いがありましたので、旧図書館に子どもたちの居場所を設置し、所在地の名前が堀端町だったことから事業全体を「ホリバタ事業」と称しています。この旧図書館では勉強をしても遊んでも良いし、子どもたちが好きに何をやっても良い場所として開放しています。
ただ、そこで集まったことをきっかけに、子どもたちがこの地域のことを主体的に考え、そして主体的に行動していくことのできるようなメニューを提供し、子どもたちの成長に寄与できるようになればと取り組んでるところです。
5つ目の「まちをつくる」とは、具体的には老朽化と地盤沈下等々で活用できなくなった温泉施設の改築や、400年あまり前からこの地を治めていた宇和島伊達家の歴史を後世に繋ぐために、新伊達博物館の整備に取り組んでいます。
そして最後に「チーム宇和島をつくる」です。やはり行政の価値観だけでいろいろなことに取り組んだところで、出てくる結果には限界があります。そこで民間の力も活用しながら、市民協働のまちづくりを目指しています。
行政だけがやるのではなく、主役は市民の皆さまですので、みんなでひとつのチームとして「まちづくり」を進めているところです。
早川:6つの創は宇和島市への移住を検討している方にもわかりやすいですね。
岡原市長:例えば防災に興味があって、宇和島は防災が進んでいるから来られる、といった要素があるかもしれないし、スポーツの施設があるから来られるかもしれません。6つの創のどこかに興味を持つ方々に来ていただければ良いなと思います。
移住者に向けたサポートとは?
早川:実際にこの政策を掲げてこれまで活動してきて、「実際にこの部分にすごく手応えがあった!」ことは何ですか?
岡原市長:先ほども触れましたが、私は市議会議員のときに2つのテーマを持って活動していました。
その1つが宇和島市をとことん売り込んでいくこと、そしてもう1つは、この地域の子どもたちにあらゆる可能性を感じて生きてもらうために、居場所づくりだけではなく、子育ての環境を整備していくことです。
この地域は大学がない地域ですので、18歳になると、それぞれの目標に向けて羽ばたいていきます。これは致し方のないことですので、18歳までの関わり方について市民協働のまちづくりの一環として取り組んでいます。
そして、いわゆる小中高の縦軸と学校別ではない横軸のつながりについて、現在、やっと構築されつつあるかなと思っております。
早川:宇和島市への移住者については、何かサポートはされていますか?
岡原市長:R4年度の移住者が410名だったと記憶しています。この中には、かねてから宇和島に縁のある方も含まれていますが、移住されてきた皆さんに対して、私たちはそこからが本番、スタートだという意識をもってサポートに取り組んでいます。
市役所には移住の相談に対応できる専門の職員が2名います。ですが、もっと身近でいろいろな情報を提供することはできないかということで、全ての郵便局を含めて各企業さん、そして個人の方々にもお願いをして、それらをサポートする「うわじま移住応援隊」という仕組みをつくりました。
ただ、これらが稼働してからまだ1年が過ぎたところですので、どこまでの成果につながっているのかについては、これからさらに精査したうえで、より本当の意味で移住者の皆さんを暖かな毛布にくるむようにフォローできればと考えております。
早川:直近でも本当に毎年、宇和島市への移住者がかなり増えてきているというデータを拝見しております。
宇和島は、現在、注目を集めている場所の一つと認識しておりますし、今後さらにサポートが充実していくことは、移住者の方にとってかなり心強いことだと思います。ありがとうございます。
市長が考える宇和島の魅力と課題
早川:次に市長が考える宇和島市の魅力についてお聞かせください。
岡原市長:この宇和島における自然環境は、やはり魅力だと思います。海の恵みを大いに享受して我々は生活をしています。
一方で、海岸から2キロも行かないうちに1000メートル級の山々が連なっており、こういった自然環境に本当に恵まれているなと感じております。
そして、豊かな自然環境は、食につながっていきます。「宇和島は本当にごはんがおいしいよね」とよく言われますが、我々にとってはもうこれが当たり前で、日常のことなんです。
他の地域から見た宇和島の魅力の一つが「食」であると、最近、本当に強く思っているところです。
そういった自然豊かなまちでありながら、まちの中心にある標高約80メートルのお城山の頂上には、現存する12天守の1つとして宇和島城がしっかりと存在感を発揮しています。
今から400年あまり前に伊達政宗公の長子である伊達秀宗公がこの地域に入部をして以来、宇和島では独特の文化が育まれてきました。このように、豊かな自然環境だけではなく、文化、歴史をしっかりと携えていることが、宇和島の魅力です。
早川:では宇和島の課題としてはどんなことがあるのでしょうか?
岡原市長:現在の最大の課題、これは決して宇和島だけの問題ではありませんが、やはり人口減少の問題であり、大変厳しい状況にあります。まちを支えるためには、人口という分母をどのように獲得していけるかが重要な問題です。
その対策のひとつが移住政策であり、一旦出ていったとしても、将来この地域に戻ってきてくれるような子どもたちをどう育ててくことができるかが重要です。
人口減少のトレンドを早々にプラスに持っていくことが難しく、実際にはいかに減らさないようにできるのか、そして、選ばれるまちとして、この地域で働いてくれる方も含めた移住者の方々に、いかに来ていただくのか、ということに汗をかいていきたいと思います。
早川:移住者を増やすための政策としては、どんなことをお考えですか?
岡原市長:移住を検討している多くの方々には宇和島の素晴らしい環境に興味をもっていただけるものの、「仕事、つまりどのようにしたらごはんを食べていけるか?」について私もよく聞かれます。
やはり第一次産業を中心としたまちですので、そこに興味をもっていただく仕掛けを、今後もしていきたいと思っています。
そして生活面については移住体験住宅などの仕組みがありますので、まずは宇和島の環境を肌身で感じでいただきたいと思います。
また、移住を検討されている方一組一組に合わせてカスタマイズするツアーも準備しております。
十分な知識、経験がない中で宇和島に移住していただき、こんなはずではなかったと思われてしまうのもすごく寂しく残念なことですので、機会を見て宇和島にお越しいただき、食であるとか、アウトドアを含めた環境に触れていただくことで、徐々に慣れ親しんでいただくことがベストではないかと思います。
実際の経験をより多く持っていただくことで、本当の意味での宇和島生活をイメージできるのではないかと思っております。これには職員をあげて、しっかりと寄り添っていくことができると考えております。
宇和島への移住を検討している方に向けたメッセージ
早川:ありがとうございます。それでは、最後に移住を検討されている方、読者に向けて何かメッセージがあれば、ぜひお願いいたします。
岡原市長:本当に移住するとなると、恐らく高いハードルがあると思います。宇和島は日本の中でも、東京などからかなり時間のかかるまちです。都内から新幹線で1時間というような便利な場所ではありません。
ですが、都内から遠く離れた場所だからこそ、都会では経験できないことができるのが、この宇和島です。自然環境は素晴らしく、アウトドアやフィッシングにかけては聖地ともいわれている場所です。
まずは、そういった遊びといいますか、軽い感覚で実際にお越しいただければと思います。それで、もし可能であれば移住体験住宅等を活用して、1週間だけでもよいので宇和島での暮らしを実際に経験してみてください。
宇和島といってもまち中の暮らしもあれば、半島部での漁村の暮らしなど、いろいろな選択肢があります。
それぞれに特徴がありますので、都会での暮らしと比較しながら、身近な自然、そして、文化、歴史などが揃っている宇和島をまずは気軽に感じてください。
今後も未来に向けて共に歩んでいくことができますように、我々はあらゆる面で努力を重ねていきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
早川:ありがとうございました。